ライニングとは、基材の表面や内面を比較的厚い膜で覆う施工方法のことを指します。
フッ素樹脂などの化学的に安定した素材を使用して表面を覆うことで、腐食や摩耗から表面を保護することが可能です。主な使用目的としては、酸性薬液やガスを生成するプラント機器に使用されています。
ライニングは、基材表面を覆うことからコーティングと似ていますが、覆う材料の厚みや使用目的によって区別されます。厳密な「ライニング」と「コーティング」の区分けの定義は存在せず、ピンホールのない厚い膜や耐食性が求められる場合には、「ライニング」と呼ばれることがあります。
通常の薄膜のコーティングでは、ピンホール(小さな穴)が発生しやすいため、耐蝕用として適切ではありません。腐食性の強い薬液を入れた際にピンホールから薬液が浸透し、基材を腐蝕させ、塗膜が剥離してしまいます。ライニングでは、厚い膜を形成することでピンホールレスの塗膜に仕上げ薬液の浸透を抑制します。
ライニングでは、厚い膜を形成することでコーティングより耐薬品性や耐摩耗性が優れていますが、通常のコーティングよりも工数が多いことからコストが高いといったデメリットがあります。そのため、通常の用途ではコーティング、耐薬品性が求められる過酷な環境ではライニングといった用途に応じて使い分けることが重要です。
ライニングには、様々な工法があり、形成できる膜厚や特性が異なります。
そのため、用途に合わせた施工方法の選定が重要です。
膜厚300 ~ 800 μ m 程度のピンホールレス仕様のフッ素コーティングです。その施工方法は、純度の高いフッ素樹脂の粉体を静電塗装し、焼付します。指定膜厚に到達するまで、6~12回繰り返し、ピンホールの無い積層皮膜を成形します。完成した被膜は、ピンホールがないので薬液やガスの浸透は無く、皮膜は不活性のため、膨潤などの透過を極限まで抑制し、酸化を起こしやすい環境から、最も優れた防蝕効果を発揮します。
塗膜構造
フッ素樹脂は、金属に密着しないためプライマー(接着剤)を始めに塗布します。
次に複数回コーティングを繰り返し、ピンホールレスの塗膜に仕上げることで基材への腐食を抑制します。アルカリ、酸、溶剤などの薬品に浸されず低温から高温まで幅広い温度範囲で使用できます。
通常のコーティングに比べ膜厚が厚いため、耐摩耗性なども向上します。
シートライニングでは、2種類の施工方法があります。フッ素樹脂(PTFE)グラスバックシートと呼ばれる特殊シートを接着剤で基材に接着させる「接着ライニング」、配管などにPTFEチューブやPFAチューブを使用し、フレア加工しただけの接着させない「ルーズライニング」があります。
シートライニング工法では、コーティングと比較すると分厚い皮膜(1mm~3mm)を得ることが出来ます。
皮膜の厚みがあるほど母材までの距離が増えるため、薬液の浸透速度は遅くなる傾向にあります。(参考 膜厚が2倍になれば透過速度は4倍遅くなると言われています。)
デメリットとして耐熱温度は接着剤の耐熱温度となるため、コーティングと比べると低くなります。
塗膜構造
フッ素樹脂(PTFE)シートライニングは、他の物質に対して化学反応を起こさないため、母材にも全く密着しません。そのため、接着ライニングでは、フッ素樹脂にガラスクロスを熱融着し、母材と接着剤で接着させる方式の施工を行います。表面層には、PTFEが来るため、様々な薬品に対して使用可能です。
ETFEまたはPFA樹脂の粉体を管体の中に入れて蓋をし、焼成炉の中で管体を回転させます。製品内面全体にまんべんなく樹脂を溶着させていく加工方法です。1mm以上の厚膜ライニングが可能であり、耐薬品性に優れた製品となっております。複雑な形状の加工に適しており、継ぎ目のない一体成型が可能です。
シートライニングでは、継ぎ目が生じ、継ぎ目の溶接部に亀裂が発生するなどリスクが生じます。ロトライニングでは継ぎ目のない一体成型が可能なため、浸透のリスクが少なく信頼性が高い皮膜を形成します。デメリットとして膜厚が厚いため、応力が加わりやすくヒートショックが起きやすいため、熱には弱い傾向にあります。また、塗膜にフッ素以外の不純物が多いとされ、クリーンな環境には適しません。
ライニングは、基材の表面に厚い膜を形成する技術のことを指します。ライニングをすることによって、耐薬品性や耐摩耗性が向上するため、プラント関係で使用されています。ライニングの施工方法により、膜厚や耐熱性が異なるため、使用される環境や化学物質により、適切な素材と施工方法を選択することが重要です。
厚膜フッ素樹脂コーティング |
シートライニング |
ロトライニング |
|
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施工方法 |
粉体塗装と焼成を複数回行う |
シートを貼り付け、蒸着 |
管体を回転させ粉体を塗着 |
耐薬品性 |
〇 |
〇 |
〇 |
膜厚 |
300~1000μm |
2mm~4mm |
2mm~5mm |
耐熱性 |
〇 |
× |
× |
継ぎ目 |
なし |
あり |
なし |
基材の形状 |
複雑形状でも可 |
限定的 |
複雑形状でも可 |
クリーン性 |
〇 |
〇 |
× |