耐食性とは?メカニズムや金属ごとの特性、腐食を防ぐ方法を解説

プラント配管やタンクの材料を選定する際、施工業者から提示されたコーティング仕様が使用環境に適しているのか、判断に迷うことはないでしょうか。とくに、薬液の種類や濃度、使用温度によって腐食の進み方は大きく異なるため、耐食性を正しく理解したうえで仕様を検討することが重要です。 
 
この記事では、耐食性の定義や腐食が起こる仕組み、金属ごとの特性、腐食を防ぐ方法を解説します。材料やコーティングの選定に役立つだけでなく、若手への教育にも活用できる基礎知識として、ぜひ参考にしてください。

耐食性とは

耐食性とは、金属などの材料が薬液や水分、酸素などにさらされたとき、腐食にどの程度耐えられるかを示す性能のことです。 
 
腐食が進むと断面が欠損して強度が低下するほか、配管であれば薬液が漏れ出したりするおそれがあります。耐食性は、製品の寿命や安全性につながる指標です。 
 
耐食性は、材料そのものだけで決まるわけではありません。同じ材質でも、薬品の種類や濃度、温度、応力の有無によって耐用年数は大きく変わります。

腐食やさびが発生する仕組み

金属の腐食の多くは「電気化学反応」と呼ばれる現象によって起こります。これは、水分や電解質が存在する環境で、金属の表面にわずかな電位差が生じることで発生するものです。 
 
電位差が生じると、電子を放出する部分は「アノード」と呼ばれ、金属が少しずつ溶け出します。一方、電子を受け取る部分は「カソード」と呼ばれ、還元反応が進行します。 
 
たとえば、鉄が水や酸素に触れると、アノードでは鉄イオンと電子が発生します。電子はカソード側の反応に利用され、水酸化物イオンが生成されます。その後、鉄イオンと結びついて水酸化鉄となり、最終的に赤さびへと変化するのです。 
 
このように、水分と酸素がそろう環境では、腐食が進行しやすくなります。腐食は見た目を損なうだけではありません。設備の強度低下や薬液の漏洩など、重大なトラブルにつながる可能性があるため、適切な対策を講じることが重要です。

腐食によっておこる問題

腐食による影響は、見た目の劣化だけではありません。プラント設備では、腐食によって配管の肉厚が減少し、破損や薬液・流体の漏洩につながるおそれがあります。また、腐食によって発生した生成物が製品に混入するリスクもあります。 
 
わずかなさびや腐食が、大きなトラブルの原因になることもあります。設備の停止による生産ロスや、修理・交換にかかるコストの増加を防ぐためにも、早期の対策が重要です。 
 
さらに、腐食による設備の劣化が見過ごされた場合、労働災害につながる可能性もあります。安全性を確保し、長期的な維持コストを抑えるためには、設計段階から使用環境に適した耐食性を考慮することが大切です。

不動態皮膜が耐食性を高める仕組み

ステンレス鋼やチタン、アルミニウムなどが高い耐食性を持つ理由のひとつが「不動態皮膜(ふどうたいひまく)」と呼ばれる薄い酸化皮膜の存在です。不動態皮膜とは、金属の表面に自然に形成される非常に薄い膜のことで、金属が外部環境と直接触れるのを防ぎ、腐食を抑える役割を果たします。 
 
皮膜の厚さは数ナノメートル程度と極めて薄いものの、緻密な構造をしており、金属イオンが外部へ溶け出すのを防ぎます。そのため、製品の外観や寸法精度にほとんど影響を与えることなく、耐食性を向上させられる点が大きな特徴です。 
 
また、不動態皮膜には「自己修復性」があります。表面に傷がついても、酸素が存在する環境であれば、皮膜が再び形成されるため、高い耐食性を維持しやすくなっています。 
 
ただし、不動態皮膜は万能ではありません。海水のように塩化物イオンを多く含む環境では、皮膜が局所的に破壊され「孔食(こうしょく)」と呼ばれる小さな穴状の腐食が発生することがあります。また、酸性やアルカリ性が極端な環境では、材料によって不動態皮膜の安定性が低下する場合もあります。 
 
ステンレス鋼は「さびない金属」と思われがちですが、正確には「不動態皮膜によってさびにくい金属」です。使用環境によっては腐食が生じる可能性があるため、耐食性を十分に発揮させるには、薬液の種類や濃度、温度などを踏まえて適切な材料を選定することが重要です。

耐食性を左右する主な条件

耐食性は、材料そのものの性質だけで決まるものではありません。同じ材料であっても、薬品の種類や濃度、温度などの使用環境によって、耐食性は大きく変化します。 
 
材料選定を行う際は、使用する薬品の条件まで含めて確認することが重要です。ここからは、耐食性を左右する主な条件について解説します。

薬品の種類と濃度

接触する薬品の種類によって、適した材料は大きく異なります。酸性・アルカリ性の薬品なのか、有機溶剤なのかを確認したうえで、耐食性を評価することが欠かせません。 
 
一般的に、強酸や強アルカリなどの腐食性の高い薬品ほど、材料への影響が大きくなります。たとえば、アルミニウムは中性付近では安定した耐食性を示しますが、薬品の濃度が高くなると急激に溶解する場合があります。

温度・圧力・流速

温度は、腐食を加速させる要因のひとつです。常温では問題のない材料でも、高温の薬液に触れる環境では短期間で劣化します。流速や圧力が高い環境では、保護皮膜が物理的に削られやすくなるため、使用条件に応じた材料グレードの見直しが求められます。

接触時間と設備構造(すき間・応力)

薬液がとどまりやすい構造や、ボルトの締結部などのすき間は、腐食が発生しやすい箇所です。すき間の内部では酸素の供給が不足し、外部との電位差によって局所的な腐食が進行します。 
 
溶接部に残る残留応力や過度な締結による応力は、腐食環境と組み合わさることで応力腐食割れなどのリスクを高める場合があります。そのため、液だまりをつくらない構造設計や、適切な施工による応力低減が重要です。

異種金属の接触

電位の異なる金属同士が、水などの電解質を介して接触すると、電位の低い金属の腐食が促進されることがあります。ステンレスとアルミニウムの組み合わせなどが代表例で、絶縁ワッシャーやブッシュによる電気的な遮断が基本的な対策です。 
 
詳しいメカニズムは、後述の「異種金属接触腐食」で解説します。

代表的な金属の耐食性

金属には、それぞれ得意な環境と苦手な環境があります。設計者には、耐食性だけでなく、コストや強度、加工のしやすさも踏まえた選定が求められます。

耐食性が高い金属の例

代表的な耐食性の高い金属の特徴・弱点・主な用途・注意点を表に整理しました。

金属
特徴
弱点
主な用途
注意点
炭素鋼・鋳鉄
強度・加工性・コストに優れる
酸素と水分で酸化しやすく耐食性が低い
汎用部材
配管
単独では耐食性を確保できず、塗装やめっきが前提
ステンレス鋼
クロムがつくる不動態皮膜で高い耐食性を発揮
塩化物イオン環境で孔食や応力腐食割れが起こる
食品機械
化学プラント
SUS304は塩害に弱く、海水環境はSUS316が適する
ニッケル合金
酸・アルカリ・高温環境でも安定した耐食性
コストが高い
化学プラントの過酷な環境で使う部品
高価なため必要な箇所に絞った採用が現実的
チタン
海水や薬品への耐性が高く、軽量かつ高強度
加工コストが高い
海水関連設備
化学プラントの配管
フッ化水素には弱い
アルミニウム
自然にできる酸化皮膜による耐食性、軽量
強酸・強アルカリに弱く、異種金属接触で腐食が進む
構造部材
輸送機器
異種金属と接触させる場合は絶縁対策が必須
その他の金属
(クロム・銅・金・白金など)
いずれも高い耐食性を持つが、コストや加工性
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このように、金属ごとの得意・不得意を把握したうえで、コストや強度、加工性とのバランスも踏まえて選定することが重要です。

環境によって腐食対策が必要になりやすい金属

耐食性の高い金属であっても万能ではありません。上の表で示した弱点のとおり、環境次第では表面処理や鋼種の見直しなど、材料単体に頼らない対策が必要になります。

金属腐食の主な種類

金属の腐食は、原因や進行のしかたによって、いくつかの種類に分けられます。さびに強い金属を選べばよいという発想だけでは、防ぎきれないケースがあるため注意が必要です。

乾食と湿食

腐食は、水分が関わるかどうかで湿食と乾食に分けられます。 
 
湿食は水や湿気が関与する腐食で、赤さびのように身の回りで起こる腐食の多くはこれに分類されます。 
 
乾食は水分が関与せず、高温環境下で酸素やガスと直接反応して進行する腐食です。鉄製フライパンの黒さびが代表例で、赤さびとは構造が異なります。

全面腐食と局部腐食

全面腐食は、金属の表面全体がほぼ均一に腐食する現象です。進行速度が緩やかで予測しやすく、腐食代を見込んだ設計や定期的な点検で対応しやすいという特徴があります。 
 
一方、局部腐食は、金属の一部分に腐食が集中する現象です。外観からは気づきにくいまま進行し、突発的な事故につながるおそれがあります。 
 
局部腐食には「孔食」「すき間腐食」「粒界腐食(りゅうかいふしょく)」などの種類があり、それぞれ発生しやすい環境や条件が異なります。

孔食

孔食(こうしょく)とは、不動態皮膜を形成する金属の表面で、皮膜が局所的に破壊されることで発生する腐食です。針で刺したような小さなくぼみが生じるのが特徴で、進行すると金属を貫通することもあります。 
 
孔食は表面の変化が小さいため、外観から異常に気づきにくい腐食のひとつです。しかし、内部では腐食が急速に進行することがあり、設備の漏洩や損傷につながるおそれがあります。 
 
これは、腐食した部分と健全な部分の間に「腐食電池」と呼ばれる電気化学的な反応が生じ、腐食がさらに進みやすくなるためです。 
 
対策としては、塩化物イオンの濃度を下げる、耐孔食性の高い鋼種を選定するなどが有効です。

すき間腐食

すき間腐食とは、ボルトの締結部やガスケットの下など、酸素が十分に供給されにくい狭いすき間で発生する腐食です。 
 
すき間の内部では溶存酸素が不足し、外部との酸素濃度の差によって腐食電池が形成されます。その結果、すき間部分で腐食が進行しやすくなります。 
 
発生の仕組みは孔食と似ていますが、孔食が金属表面の局所的な皮膜破壊によって起こるのに対し、すき間腐食は酸素が不足する構造上の問題によって発生する点が異なります。 
 
対策としては、腐食が起こりにくい構造へ変更することや、シール材を用いてすき間を埋める方法が有効です。

粒界腐食

粒界腐食は、金属の結晶粒界に沿って進行する局部腐食です。ステンレス鋼を450℃から850℃程度に加熱すると、鋼中の炭素とクロムが結びつき、クロム炭化物が粒界に形成されます。この現象は鋭敏化と呼ばれ、不動態皮膜が形成されにくくなることで腐食が進行します。 
 
溶接の熱影響部で起こりやすいため、低炭素のステンレス鋼を採用するなどの対策を心がける必要があります。

応力腐食割れ

応力腐食割れは、引張応力と特定の腐食環境が同時に作用し、材料が脆性的に破壊される現象です。外観からは大きな腐食が見られなくても、内部で微細な亀裂が進行し、突発的な破断につながるおそれがあります。溶接による残留応力も原因となるため、応力の管理が大切です。

異種金属接触腐食

異種金属接触腐食は、電位の異なる金属同士が電解質を介して接触することで生じる腐食です。ステンレス製のボルトをアルミニウム製のフレームに使用したケースでは、アルミニウム側が優先的に腐食する場合があります。 
 
異なる金属を組み合わせる必要がある場合は、電気的な接触を防ぐ対策が重要です。具体的には、絶縁ワッシャーやブッシュを使用して金属同士の直接接触を避けるほか、水分や塩分が入り込まないような防水対策も意識しましょう。

金属の耐食性を高める方法

材料選定だけで耐食性の問題をすべて解決できるとは限りません。表面処理によって耐食性を底上げすることも重要な選択肢であり、方法ごとのメリットとデメリットを踏まえた使い分けが求められます。

塗装・めっき・フッ素樹脂コーティング

塗装コーティングとは、樹脂を主成分とした塗膜で金属表面を覆う表面処理です。比較的低コストで広い範囲に施工できる一方、膜厚のばらつきやピンホールがあると、そこから下地の金属が腐食するおそれがあります。 
 
めっきコーティングは、金属表面に別の金属の薄い膜を形成する表面処理です。たとえば、亜鉛めっきには「犠牲防食」と呼ばれる仕組みがあります。これは、鉄よりも腐食しやすい亜鉛が先に腐食することで、鉄を保護する方法です。表面に傷がついた場合でも、鉄の腐食を抑える効果があります。 
 
ニッケルめっきは、優れた外観と耐食性を両立できる点が特徴です。装飾性が求められる部品から、耐久性が必要な部品まで幅広く利用されています。 
 
フッ素樹脂コーティングは、強酸や強アルカリなどに対する高い耐薬品性を持つ表面処理です。化学プラントや半導体関連設備など、厳しい薬品環境で使用される機器にも採用されています。 
 
また、非粘着性にも優れており、汚れや固着物の付着を抑えられる点もメリットです。ただし、耐食用途で使用する場合は、ピンホールの発生を防ぐため、適切な膜厚を確保することが重要です。 
 
コーティングを選定する際は、材料の特性だけでなく、施工業者の技術力や施工後の品質保証体制も確認する必要があります。 
 
関西ポリマー株式会社は、40年以上にわたって培った課題解決力と製品知識をもとに、フッ素樹脂コーティングをはじめ、厚膜コーティングやPEEKコーティングなど幅広い表面処理に対応しています。特殊な試作や少量多品種の施工にも対応できる体制を整えており、さまざまな用途に合わせた相談が可能です。 

各製品の特徴や対応可能な用途を詳しく確認したい方は、関西ポリマー株式会社の製品カタログをご覧ください。

不動態化処理・化成処理

不動態化処理は、硝酸やクエン酸などを用いてステンレス表面の汚れや鉄分を除去し、不動態皮膜による耐食性を維持・回復させる処理です。加工時に付着した鉄粉によるもらいさびを防ぎ、ステンレス本来の耐食性を維持します。 
 
化成処理は、薬品によって金属表面に非金属皮膜を形成する処理です。単独での耐食性は限定的ですが、塗装の下地として組み合わせることで、密着性と防食性能を高められます。クロメート処理やリン酸塩皮膜処理が代表例です。

金属の耐食性に不安のある環境では樹脂素材という選択肢も

強酸や強アルカリなどの厳しい環境では、金属であっても不動態皮膜が破壊され、腐食が発生する場合があります。そのような環境で、金属部品を交換し続けることが最適な対策とは限りません。 
 
そこで検討したい選択肢のひとつが、樹脂素材への置き換えです。樹脂は金属のような電気化学的な腐食反応を起こさないため、使用条件が適していれば、長期間にわたって安定した性能を維持できます。 
 
また、既存の金属部品に対しては、PEEKコーティングや厚膜コーティングによって耐食性を高める方法もあります。

耐食性が高い樹脂素材の例

薬液にさらされる環境では、金属の代替材料として耐薬品性に優れた樹脂素材が選ばれることがあります。 
 
ここでは、プラント設備などで使用されることが多い5種類の樹脂について、それぞれの特徴を紹介します。

PTFE

PTFEは、フッ素樹脂の中でもとくに高い耐薬品性を持つ樹脂です。強酸や強アルカリ、有機溶剤にほとんど侵されず、高温下でも特性を維持できます。摩擦係数が低く、非粘着性にも優れており、パッキンやガスケット、化学プラントの配管部材などに使われています。

こちらの記事では、PTFEについてより詳しく解説しています。テフロンとの違いや製造方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

PEEK

PEEKは、優れた耐薬品性と高い機械的強度を両立したスーパーエンジニアリングプラスチックです。連続使用温度は240℃~260℃と高く、濃硫酸などの一部を除けば、ほとんどの薬品に対して高い抵抗力を持ちます。価格は高めですが、耐食性と強度の両方が求められる場面で、信頼性の高い選択肢です。

PP

ポリプロピレンは、酸やアルカリに対して安定した性質を持つ汎用樹脂です。常温付近では薬液に高い耐性を示し、排気ファンや薬液タンクのライニング材として広く利用されています。軽量で加工性もよく、コストを抑えたい場合に向いています。

PE

ポリエチレンは、実験用の薬品ボトルにも使われるほど、耐薬品性に優れた樹脂です。酸やアルカリに加え、次亜塩素酸ナトリウムなど一部の薬品にも耐性があり、水処理施設の配管部品などに利用されています。耐熱温度は低めですが、低温でも割れにくい柔軟性を持ちます。

PVC

PVCは、塩素原子を含む構造により、ほかの汎用樹脂と比べても高い耐薬品性を持つ樹脂です。酸やアルカリに高い耐性を示し、化学プラントや食品加工設備の内部防食用ライニング材として利用が増えています。絶縁性や成形性にも優れ、配管やケーブルジャケットなど、幅広い用途に応用されています。

まとめ

耐食性を高めるには、材料そのものの性能だけでなく、使用環境や設計、メンテナンスまで含めて総合的に検討することが重要です。薬品の種類や濃度、温度、応力などの条件に適した材料や表面処理を選ぶことで、設備の長寿命化や維持コストの削減につながります。 
 
しかし、腐食対策は環境ごとに必要な性能が異なるため、最適な方法を判断するには専門的な知識が欠かせません。 
 
関西ポリマー株式会社では、40年以上にわたり培った表面処理技術をもとに、フッ素樹脂コーティングやPEEKコーティング、厚膜コーティングなど、さまざまな腐食環境に対応した施工を行っています。PFASフリー製品や特殊試作、少量多品種にも柔軟に対応し、材料選定から施工まで一貫してサポートします。 
 
耐食性に優れた表面処理や材料選びでお悩みの方は、ぜひ関西ポリマー株式会社へお気軽にご相談ください。